【舞いあがれ!】実家への融資を断る姿に「悠人が正しい」と視聴者が断言するワケとは!

 その言葉に「家族としての情がない」と反発するのは、的外れなのかもしれない。

 1月11日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第69回では、社長の岩倉浩太(高橋克典)が心筋梗塞で急逝した部品工場の株式会社IWAKURAを巡って、兄と妹が対立する場面が描かれた。そこで兄が下した決断に理解を示す視聴者が少なくなかったという。

 夫を失った妻のめぐみ(永作博美)が社長代行となるも、融資元の信用金庫はおろか社内からも「奥さんに経営は無理」との声があがることに。娘でヒロインの舞(福原遥)は工場を続けられるように手伝いを申し出るも、ほとんど力にならないのは明らかだ。

 そこで舞は、投資家として成功している兄の悠人(横山裕)を頼ることに。東大卒業後、大手電機メーカーを経て独立し、「リーマンショックを予言した男」として名をあげた敏腕投資家の悠人なら家業の窮地を救えるのではと期待して、「IWAKURAに投資してください」と頭を下げたのであった。

「悠人は『断る』と即答。会社を続けるなら経営者になるのは母親のめぐみだと指摘したうえで『無理や』とダメ押しです。舞は工場がなくなるのは寂しくないのかと感情論で責めるものの、冷静な投資家である悠人は『全然』と取りつく島もありません。そんな悠人の態度は冷たく見えるものの、多くの視聴者は『悠人が正しい』として、合理的で当然の判断だと支持していたようです」(週刊誌記者)

 悠人がIWAKURAの救済を断ったことには二つの理由がありそうだ。ひとつはリーマンショックの影響で受注激減の経営状態が上向く可能性が乏しく、経営者として未経験の母親では舵取りができないという真っ当な判断である。

 そしてもう一つは、今なら会社を畳むほうが合理的というもの。売り上げが激減するなか、IWAKURAでは岩倉家の貯金を取り崩して従業員の給料に充てるほどの苦境ではあるものの、自宅が抵当に入っているといった壊滅的な状況ではない様子。信用金庫からもいますぐ会社を畳めば借入金は完済できると言われていた。

「もし岩倉家が窮乏しており、会社が倒産したら一家離散という悲惨な状態であれば、さすがの悠人も家族を救うでしょう。しかし現状は、撤退戦で生き延びることができる状況。悠人が大学に進学する前は、自宅の裏手にある工場だけで細々と経営していたのですから、その規模に戻せば小さな町工場として存続できるという判断が働いたのではないでしょうか」(前出・週刊誌記者)

兄の悠人に投資を頼み込んだ舞。トップ画像ともに©NHK

 悠人が母親の経営では無理だと指摘したのも、現在のIWAKURAが20人超の従業員を抱え、町工場としてはそれなりの規模になっているからだろう。

 事業融資の目安となる借入金月商倍率では、3倍までが健全な借入限度と言われている。それに従えば3億円を借り入れたIWAKURAは月商1億円、年商12億円程度はあるはず。その規模の会社を未経験者のめぐみが経営するのは、さすがに無理のある話だ。

「家族経営のような小さな町工場なら、月々の収支も家計簿さながらの単式簿記でなんとか回せますが、月商1億円規模なら複式簿記が必須。退職した総務経理課長の古川(中村靖日)が重宝されていたのも、経理に明るい人材が必要だったからこそです。めぐみがその代わりをこなすのは難しいですし、新たな経理担当者を雇う余裕もないはず。悠人でなくてもIWAKURAの未来がお先真っ暗であることはもはや自明でしょう」(前出・週刊誌記者)

 悠人の見立てを突っぱねた舞はいったい、IWAKURAのために何を手伝うというのか。むしろ当初の目標だったパイロットになり、給料からいくばくかでも実家に仕送りするほうが、家業の継続には役立つのかもしれない。