やはり「舞いあがれ!」では、飛行機が重要なテーマとなっていたようだ。
1月18日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第74回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)の振る舞いに、亡き父親の姿が重なる様子が描かれた。その場面で映し出された「飛行機雲」に、本作のテーマが示されていたという。
部品工場の株式会社IWAKURAを経営していた浩太(高橋克典)が亡くなり、妻のめぐみ(永作博美)が社長業を継承。娘の舞はパイロットへの道を自ら投げうち、新米社員として営業に奔走していた。
舞は十数年来の取引先であるカワチ鋲螺を訪問。浩太をよく知る担当の森本(森本竜一)に対し、「どんな小さい仕事でも構いません。精一杯やらせてもらいますんで」と頭を下げていた。
「その姿に《浩太と一緒だ!》と思った視聴者も多かったはず。10月19日放送の第13回では、舞がまだ小3だった1994年に浩太が、カワチ鋲螺に新しい仕事をもらいに行っていました。そこで浩太は『どんな仕事でもやらしてもらいますんで』と森本に対して深々と頭を下げていたのです」(テレビ誌ライター)
今回の放送でもその姿がすかさず回想シーンとして挿入。小3だった舞は、父親がどんな営業をしていたのか知るよしもない。だが父娘は偶然にも同じような言葉、同じような仕草で、営業に奔走していたのだ。
しかも浩太が頭を下げた時と、舞が頭を下げた今回では、岩倉家を巡る状況も似ていた。2009年の現在はリーマンショックの影響でIWAKURAが存亡の危機に立たされており、1994年の時は大きな取引先から取引を打ち切られ、長男の悠人が私立中に進学すらことすら断念しかねないほどの危機だった。
このように家業の工場に危機が迫るなか、同じような振る舞いを見せていた父と娘。その状況で浩太と舞を繋ぐ、もうひとつの大事な要素もまた可視化されていたのである。
「森本に頭を下げた舞がふと窓の外を見ると、そこには空に線を描く飛行機雲が。本作では時折、飛行機の音が背景に聞こえてくることがありましたが、今回ついにその飛行機が可視化されたのです。これは舞と浩太が飛行機というアイテムを通じて繋がっていることを示す、重要な描写だったと言えるでしょう」(前出・テレビ誌ライター)
浩太が1994年にカワチ鋲螺を訪れる前には、別の取引先から取引打ち切りを宣告されていた。事務所で肩を落としていた浩太だが、舞はその時、古書店のデラシネで購入した模型飛行機の本を浩太に見せようとしていたのである。
思えば舞が飛行機に興味を持つようになったのは、浩太から模型飛行機について教えてもらったからだった。その後、人力飛行機のパイロットを務め、ついには航空学校を卒業してパイロットの卵にまでなっていた。
パイロットへの道はあきらめたものの、浩太から受け継いだ飛行機への情熱は、彼女の中にまだ残っているはず。このタイミングで見つけた飛行機雲は、父から娘に受け継がれるバトンだったのではないだろうか。