ここに来てついに男気を見せたようだ。
1月19日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第75回では、部品工場の株式会社IWAKURAで社長を務める岩倉めぐみ(永作博美)が、会社の売却を報告。その売却先はなんと、長男の悠人(横山裕)だった。翌20日の放送ではめぐみが悠人のもとを訪れ、「工場を買い取ることでIWAKURAに投資してほしい」と依頼する場面も描かれていた。
投資家として成功している悠人はかつて、ビジネスとしての視点からIWAKURAにさしたる未来はないと判断。妹でヒロインの舞(福原遥)から会社への投資を頼まれるも、にべなく断っていた。それが今回は会社買収を決断したのだが、そこにはどんな変化があったのだろうか?
1月17日放送の第73回で悠人は自ら実家に足を運び、会社の清算を提案。跡地にマンションを建てれば信用金庫からの借金が返済できるうえに、めぐみは家賃収入で生活できると持ち掛けていた。しかも初期投資は自分が出すというのである。
「その提案は断っていためぐみですが、自分から悠人に相談を持ち掛け、会社を丸ごと悠人に買ってもらう話を付けました。新たなプランでは買収先の悠人に家賃を払うことで、会社を続けられるという算段です。ただ作中では明示されていなかったものの、このプランは結果的に、悠人によるIWAKURA救済策であることは明らかでしょう」(週刊誌記者)
めぐみは社員に対し、土地と工場を売れば借金をすべて返せる上に、運転資金にも充てられると説明。今まで通り、この工場でねじを作り続けられるという。
ただ普通に考えたら、この話を額面通りに受け取ることはできないはずだ。そもそも信用金庫からは浩太が亡くなった時点で、会社を畳めば借金は完済できると説明されていた。
しかし土地が買収価格と等価で売れたとしても、工場や工作機械は中古となることから、値下がりは必然。それでも完済が可能だということはおそらく、3億円を借り入れる際にIWAKURA側でもそれなりの自己資金を用意していたのだろう。
見方を変えれば、現在のIWAKURAは評価額3億円の会社であり、自己資金分は目減りしている計算だ。その会社を悠人は3億円以上で買収するわけだから、悠人にとっては持ち出しになるのではないだろうか。
「その持ち出し分こそが、悠人の男気でしょう。そもそもマンションの投資を持ちかけた際にも、悠人は『初期投資は俺が出す』との男気を見せていました。それに気づいためぐみが、その男気をマンション投資にではなく、IWAKURA買収に使ってくれと頼み込んだのではないでしょうか。しかも悠人が会社を買収して経営に参画する形なら、男気相当の投資に贈与税がかかる心配もありませんから、より合理的な方法と言えるかもしれません」(前出・週刊誌記者)
社員たちが「そんな都合のいい買い主おったんですか?」と怪しんでいた通り、経済的にはとても合理的な判断とは言えない悠人のIWAKURA買収。買収と同時に含み損を抱えてしまうのは確実だが、果たして舞は兄が見せた男気に気付いているのだろうか。
その悠人は舞に、今からでもパイロットになってほしいと思っている様子。舞はパイロットと部品工場のどちらを選ぶのか。視聴者としては両方の物語を観てみたいところかもしれない。