結局、可愛いのは娘ひとりだったようだ。
1月25日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第79回では、ヒロイン岩倉舞(福原遥)の説得により、株式会社IWAKURAが航空機部品の製造にチャレンジする様子が描かれた。だがその裏側では、本当に感謝すべき相手が軽んじられていたのである。
4年前に前社長の浩太(高橋克典)が急逝し、経営危機に瀕していたIWAKURA。だが会社を継いだ妻・めぐみ(永作博美)と営業担当者として入社して舞の尽力で、2013年を迎えた現在は順調に業績を伸ばしていた。
舞は以前から、亡き父の夢であった航空機産業への参入を目指しており、社長のめぐみを伴ってセミナーに参加。そこで知り合った菱崎重工業の荒金(鶴見辰吾)から、新型エンジンに使うボルトの試作を依頼されたのだった。
「自宅の仏壇に手を合わせためぐみは『浩太さん、IWAKURAで航空機の部品、試作することになってんで』と報告。お父ちゃんの夢を叶いたいという舞の姿を見せてあげたいと語り掛けました。さらに『リーダーは、舞なんやで』と笑みを見せていましたが、長男で投資家の悠人(横山裕)については結局ひと言も触れなかったのです」(テレビ誌ライター)
IWAKURAが飛行機産業に参入できるのは、もちろん舞の前向きな態度も大きな理由の一つだが、最も大きな貢献を果たしたのは同社を倒産の危機から救った悠人のはずだ。
浩太の急逝という緊急事態にあえいでいたIWAKURAは、会社の身売りも検討せざるを得ない危機的な状況に。ここでめぐみは悠人に会社の土地と工場を買収してもらい、その代金で信用金庫からの借金を清算。悠人に家賃を払いながら営業を続けるという裏技を駆使していた。
しかし投資家に買ってもらうだけで危機を脱せるのであれば、信用金庫側も貸し剥がしなどせず、追加融資でIWAKURAを存続させていたはず。そうならなかったのは、悠人が評価額を超える高値でIWAKURAを買収し、借金が完済できる余力を与えたからなのは明らかだった。
「IWAKURAでは現在も悠人に家賃を払いながら会社を存続。ねじ作りを続けられるのは誰あろう、悠人のおかげです。しかも悠人は、舞が航空機産業への参入をもくろんでいることを知った時に『まあ、ええんちゃう』と静観。投資家として冷静に判断するなら即座に否定すべきところですが、彼自身も父親の想いを知っていたからこそ止めなかったのでしょう。しかしそんな想いはめぐみには通じなかったようです」(前出・テレビ誌ライター)
今のめぐみはまるで「喉元過ぎれば熱さを忘れる」との格言そのもの。悠人に受けた大恩など忘れてしまったかのようだ。果たして悠人は今後、IWAKURAにどう関わっていくのか。他人の家庭事情ながら、視聴者としても気になって仕方ないのではないだろうか。