【舞いあがれ!】航空関連の考証がいきなり雑に?「柏木が日本に帰ってない」はあり得ない!

 そんなフライトスケジュール、あり得ないでしょ? 怪しむ声もあがっていたようだ。

 2月3日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第86回では、ヒロインの岩倉舞(福原遥)を航空学校の同期生が訪ねてくることに。ひとしきり航空関連の話題で盛り上がっていたが、その会話に不自然な箇所が見受けられたという。

 この日は航空学校をフェイル(退学)して実家のスーパーを継いでいた水島(佐野弘樹)と、現在はパイロットとして飛んでいる吉田(醍醐虎汰朗)が登場。水島が仕事で大阪に立ち寄り、吉田もたまたま大阪ステイだったことから、東大阪在住の舞に連絡したという。

 舞が「吉田くんは副操縦士、どない?」と訊ねると、吉田は「キャプテンにはまだまだ遠いけどね」と返答。同じく同期の矢野(山崎紘菜)や中澤(濱正悟)らとは空港で時々会うという。また水島によると、舞の元カレだった柏木(目黒蓮)は国際線でブイブイ言わせているそうで、「全然、日本帰ってきてないもんなあ」とのことだ。

「このように、3人の会話は同期生たちの現状報告となっていました。しかし航空ファンの間からはこの会話に《おいおい…》と呆れる声があがっていたのです。今週の放送では航空部品製造の考証スタッフはクレジットされているものの、航空業界そのものの考証はされていない様子。どうにも不自然な内容の会話にはツッコミが入っていました」(航空業界に詳しいトラベルライター)

4年ぶりに再会した舞と水島、吉田の航空学校同期生たち。トップ画像ともに©NHK

 おかしな箇所の一つ目は、吉田が口にした「キャプテンにはまだまだ遠い」というセリフだ。航空学校を卒業して航空会社に入社した場合は約2年間の訓練を経て、副操縦士としてチェックアウトするもの。つまり入社4年目の吉田は副操縦士としてはまだ2年目ということになる。

 一方でキャプテン(機長)への昇進ではおおむね10年ほどの乗務実績が必要とされており、吉田にとってはかなり先の話。2年目の若手副操縦士に過ぎない吉田がキャプテンうんぬんを口にするのはいかにも不自然で、一般企業で言えば若手社員が「部長はまだまだ遠い」とこぼしているようなものだろう。

「もうひとつおかしいのは、国際線で飛んでいる柏木が『全然、日本帰ってきてない』というところ。というのも現実のフライトパターンでは、副操縦士が海外に滞在し続けることなどあり得ないからです。パイロットの乗務時間は航空法および航空法施行規則により月間100時間以内と定められていて、長距離国際線なら月に5往復がやっと。海外でのステイも2泊程度と短めで、すぐ日本に戻ってくるサイクルとなっています。20世紀のバブル期ならステイ先に1週間滞在し、高級ホテル暮らしをエンジョイするようなこともありましたが、21世紀では1泊だけでトンボ返りするスケジュールも珍しくなくなっていますね」(前出・トラベルライター)

 パイロット業務に関する部分は、航空関連の考証スタッフを入れていればすぐにおかしいと気づくはず。航空学校編では長期にわたる取材でしっかりと考証を重ねていたものだが、舞が工場での営業職で奮闘するようになってからは、そのへんがおろそかになったのだろうか。

 一方で、正しい表現も見受けられた。それは水島が舞に「パイロットの資格がなくなるわけじゃないしね」と言及したもの。操縦免許(正式には航空従事者技能証明)に失効という制度はなく、舞は引き続き免許を保有しているのである。

 実際に舞が飛行機を操縦するには、技能や知識が維持されているかを審査する「特定操縦技能審査」が必須なほか、「航空身体検査証明」に合格する必要もある。そのためには時間も費用も必要だが、株式会社IWAKURAが今後、航空分野に進出するのであれば、舞がテストパイロットを務める可能性もありそうだ。