【舞いあがれ!】これは「真似しちゃダメ」なヤツ!低体温症に陥った悠人の救護に疑問の声が続出

 看護師なら違った対応をするのでは? そう案じた視聴者も多かったようだ。

 2月7日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第88話では、12月の冷たい雨のなか、公園で行き倒れた岩倉悠人(横山裕)が、旧知の望月家に救われる場面があった。だがその描写に疑問を感じる人が続出していたのである。

 インサイダー取引疑惑でマスコミに追われる悠人はいつしか、実家のある東大阪市に舞い戻ることに。ケンカをしたらしき悠人は傘もささずに雨のなかをズブ濡れになりながら、公園の地面にあおむけに倒れ込んでしまった。

 たまたま通りかかった望月佳晴(松尾諭)は倒れているのが悠人だと気づき、自宅に連れ帰ることに。ズブ濡れの身体を拭いているところに娘で看護師の久留美(山下美月)が帰宅し、「あかん、めっちゃ冷たい」と悠人が低体温症に陥っていることに気付いたのだった。

「作中に低体温症という言葉は出てきませんが、次回予告の記事には『低体温症になっていることに気づく』との記述があり、NHKとして公式の設定だと思われます。久留美が看護師だったことが幸いし、悠人は意識を取り戻しますが、そこの描写があまりにいい加減で、視聴者からは《これ真似しちゃダメなやつでしょ!》と批判の声もあがっていたのです」(医療系ライター)

 久留美は「悠人さーん、しっかりしてください」と、いかにも看護師らしい掛け声で意識の有無を確認。本作には医事考証のクレジットも入っており、看護師が使う用語はチェックされているのだろう。

 ところがそのあとがいただけなかった。佳晴の服に着替えさせられた悠人は乾いた布団に寝せられており、やがて意識を取り戻していたが、その描写は低体温症患者への対応としては不適切だというのである。

「低体温症では軽度であっても、温めた毛布による断熱で対処するもの。体温が著しく低い場合には電気毛布などを使って外部から復温します。この際、心臓付近の血流を維持するために、胸部から温めるのですが、今回の作中ではブランケットを胸と腹の中間くらいに掛けており、胸から上は丸出し。これでは十分な復温ができないのではないでしょうか」(前出・医療系ライター)

悠人を気遣う久留美と佳晴の望月親子。トップ画像ともに©NHK

 しかも望月家に運び込まれた悠人は、ただ黙って寝ていた。軽度の低体温症ではシバリングという震えが発生し、自ら熱を産生しようとするもの。その震えがないということは、中度以上の症状である可能性もある。その場合は治療手段のない自宅ではなく、医療機関への搬送を優先すべきだろう。

 作中の時代は2013年でコロナ禍前のため、救急車不足といった事態にも陥っていない時期。冬の雨に長時間さらされていた低体温症の患者であれば、看護師の久留美は躊躇することなく救急車を呼ぶべきだったのではないだろうか。

「久留美が意図的に救急車を呼ばなかったという筋書きの可能性もあります。悠人はインサイダー取引疑惑でマスコミから追われる身であり、病院に担ぎ込まれたことが発覚したら大騒ぎになりますからね。しかし病院には守秘義務があり、それは看護師の久留美も同じこと。よもや岩倉家に張り込む取材陣も、地元の救急病院まではチェックしていないでしょう。よって悠人を病院に担ぎこまない筋書きは、低体温症を描く際には不適切ではないでしょうか」(前出・医療系ライター)

 そもそも悠人を発見したのが幼いころからの顔見知りである佳晴だったのも都合の良すぎる話だが、そこは「ドラマだから」と優しい目で見るべきところだろう。だが低体温症の治療という医療面の描写がいい加減なのは、いくらドラマでも看過できないのではないか。

 それとも悠人が公園に倒れていたのはほんの短時間であり、取材から逃げ続ける疲労で寝込んでしまっただけなのか。命に関わるような描写は、もう少し緻密にお願いしたいところだろう。