【舞いあがれ!】貴司が舞のもとを離れる?旅連載のアイデアは物語の「ちむどんどん化」を防ぐのか

 感情移入しづらいヒロインを、夫の行動が救うことになるのかもしれない。

 2月27日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第102回では、ヒロインの梅津舞(福原遥)が金網の商品化プランを考えることに。その姿が前作「ちむどんどん」のヒロイン・比嘉暢子さながらだと懸念する視聴者も少なくないようだ。

 前週、オープンファクトリーの「東大阪町工場フェスタ」を成功に導いていた舞。自らが発案して音頭を取り、市役所や他の町工場を巻き込んでいく姿には、ヒロインの全能感が存分に表れていた。今回も経営不振の金網工場に首を突っ込んでは勝手に商品プランを提案しており、すべてヒロインの思い付きで始まるところは「ちむどんどん」にて沖縄料理店の開店や故郷へのUターンを実現させてきた暢子そっくりだ。

 そんな舞と暢子は、夫の在り方まで瓜二つ。片や歌人で古書店経営の貴司(赤楚衛二)、片や元新聞記者でフリーライターとして糊口をしのぐ和彦は、いずれも文筆業をメインとしつつ、稼ぎはそれほどでもない様子だ。だが実家に資産があるからか悲愴感はなく、二人とも妻の意向には決して反対せずに、なんでも受け入れてしまう体質である。それが妻(舞&暢子)の暴走を許してしまう要因となっているのではないだろうか。

「それに加えて両ヒロインはいずれも母親から全幅の信頼を置かれていますし、金銭的な窮地に陥っても身内の誰かが援助してくれるところも一緒。舞は航空学校でパイロットのライセンスを取得し、暢子はイタリア料理店でシェフとして修業するも、二人そろって別の事業に踏み出します。このように舞と暢子はあまりにもそっくりな人生を歩んでおり、まるで『舞いあがれ!』が『ちむどんどん』をコピーしているかのようです」(テレビ誌ライター)

 舞はいずれ、電動小型飛行機の開発に乗り出すことが分かっている。それは父親の夢を実現するという原点回帰であり、暢子が沖縄の実家に戻って沖縄料理店を開店した流れと方向性は一緒。何もそこまで似せなくても思うほど、今後の展開まで同じことには驚くほどだ。

 だが今回、「舞い上がれ!」が「ちむどんどん」とは異なる方向に進んでいく可能性が示されたという。それはヒロイン自身の振る舞いではなく、夫のほうの事情だというのである。

「貴司は編集者のリュー北條(川島潤哉)から雑誌連載を打診されることに。それは歌人としての貴司の原点だった、日本中を旅しながら歌を詠んでいくというものです。貴司は家に帰れるのかを心配していましたが、北條は古書店のデラシネはしばらく休業するしかないと主張。それはすなわち貴司が『ヒロインの夫』という地位に安住しない生活を選ぶことを意味しているのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

北條から思いがけない打診を受けた貴司。トップ画像ともに©NHK

 貴司と和彦はいずれも、妻であるヒロインの実家に同居することを選んでいた。和彦はそのまま、ライフワークとする沖縄に関する書籍を書き続けていたが、どうやら貴司のほうは舞のもとを飛び出していく様子だ。

 北條から旅連載を打診された貴司は「考える時間、いただけませんか」と返答していた。これはもはや連載を受託したも同然だろう。果たして貴司がいない舞は、それまで通りに自分の想いを突き通し続けられるのか。暴走気味な舞の心をクールダウンさせるためにも、貴司はしばし舞との距離を置くべきなのかもしれない。