【舞いあがれ!】めぐみの決断で社会派ドラマに?介護問題に加え「所有と経営の分離」まで登場!

 予想できた展開とはいえ、面食らった視聴者も多かったことだろう。

 3月15日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第114回ではめぐみ(永作博美)が、脳梗塞で倒れた母親の祥子(高畑淳子)を東大阪の自宅に引き取ると決断。その家族会議にて突如、「介護問題」がクローズアップされることとなった。

 長崎・五島で一人暮らしを続けていた祥子だが、脳梗塞の影響で手足にしびれが残るようになり、渡し船の仕事は続けることが不可能に。日々の生活にも影響が出ることは確実で、めぐみは祥子を自宅で引き取りたいと、娘の舞(福原遥)や娘婿の貴司(赤楚衛二)に相談していた。

 貴司の母親である雪乃(くわばたりえ)も賛成するなか、父親の勝(山口智充)は「反対してるわけちゃうで」と言いつつも、親を介護することの大変さを主張。「いまお母さん来てもろても、ちゃんと面倒見れへんちゃうかな」との正論をぶつけたのである。

「本作は最初のうちこそヒロイン舞の成長物語として視聴者を惹きつけていましたが、途中からは『舞が願うことはなんでも叶う』という都合の良い展開に変質し、浮世離れしたファンタジーと化していました。そんな浮ついたストーリーが今回、介護という現実問題を表出させることにより、ぐっと現実に引き戻されたのです」(週刊誌記者)

 前週に放送された次週予告では、祥子が東大阪で暮らす様子も紹介され、無事に引き取れたと視聴者も思っていたはず。舞の娘も含めて母娘4代がそろって暮らすハッピーな家族が描かれるとの期待もあったことだろう。

 だが70年以上にわたって五島で暮らしていた祥子にとって、東大阪という都会に引っ越すことは、外国に転居するにも等しい大転換だ。それまでの人間関係をすべて断たれることになり、しかも介護される立場では行動の自由も制限されるというもの。

 舞の存在を通してめぐみとの関係は修復され、祥子は物分かりの良いばんばとして描かれてきたが、今後の介護生活では孤独に苦しみ、めぐみとぶつかることもあるだろう。そういった負の面もきっちり描くのであれば、本作は社会派ドラマとしての側面も見せてくれるのかもしれない。

「介護問題に加えて、家業である部品工場のIWAKURAを巡っても、ひと悶着ありそうです。視聴者のあいだでは以前から、めぐみの次に工場を継ぐのは誰なのかという疑問がありました。娘の舞は独立して自分の会社を経営していますし、息子の悠人は投資家としてインサイダー取引で有罪になった過去を持ちます。それゆえいずれは第三者に社長を譲るほかなく、その候補者は自ずと絞られていたのです」(前出・テレビ誌ライター)

結城への社長禅譲を打診しためぐみ。トップ画像ともに©NHK

 祥子の介護に専念したいめぐみは、古参社員の結城(葵揚)に社長を譲りたいとの意志を示していた。IWAKURAは亡き夫・浩太(高橋克典)の祖父が設立し、親子三代にわたって受け継いできた会社だ。その経営をついに、家族以外の人物に託そうというのである。

 そのIWAKURAはおそらく、めぐみら岩倉家がすべての株を握る同族企業だろう。一時は経営危機を乗り切るために息子の悠人に工場や土地を買収してもらったことがあり、その後に権利をめぐみに戻した経緯がある。それゆえこれまでは会社の所有と経営は完全に一致していたのである。

「その状況が結城に社長を譲ることにより、いわゆる『所有と経営の分離』が図らずして実現することになります。もとよりめぐみは職人ではなく、一方で若いころから経理を担当してきたことから、工場の経営はベテラン職人の結城に任せ、お金の流れが分かるめぐみが株主として経営状況を監視するという役割分担は理想的。IWAKURAがさらなる業務拡大を目指すためには望ましい状況だと言えるのかもしれません」(前出・週刊誌記者)

 片や介護問題、そして片や会社経営と、いきなり二つの社会問題を投下した今回。ファンタジーと化していた物語にリアリティを与えることで、最終回に向けて有終の美を飾れるように軌道修正しているのではないだろうか。