3月27日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第122回では、「空飛ぶクルマ」を開発している株式会社ABIKILUに、浪花大学の学生・森重朝陽(渡邉蒼)が訪問。試験飛行から得た生データを分析してグラフ化するミッションが与えられた。
その朝陽は小学生だった12年前、長崎・五島に“留学”。都会の小学校になじめず孤立していたことから、母親が環境を変えようと、島の役場による留学体験に応募したものだ。母子は祥子(高畑淳子)の家に滞在しており、祥子の孫であるヒロインの舞(福原遥)と親交を結ぶことに。その縁で今回、ABIKILUに呼ばれたのだった。
どうやら五島での留学体験は役に立ったようで、朝陽は大学まで進学することに。しかも舞も通っていた大阪の浪花大学で、航空宇宙工学を勉強しているという。ABIKILUを訪れた朝陽は「空飛ぶクルマ」のブレード(プロペラ)に強い興味を示し、自ら「惑星探査ドローン」の勉強をしていると明かしていた。
朝陽が五島に留学しているころ、舞は航空会社への内定がリーマンショックの影響で1年先延ばしとなっていた。お互いに将来に不安を感じながら島に滞在していた二人が、時を経て邂逅を果たしたことに、伏線の回収を感じた視聴者も多かったことだろう。だが一方ではこの展開に「ご都合主義」との違和感を抱く者も少なくなかったというのである。
「朝陽が通う浪花大学は、制作側では具体的なモデルはないとしているものの、大阪府立大学(現・大阪公立大学)がモチーフなのは明らか。一方で朝陽は東京出身であることが分かっています。関西地区では京大・阪大・神戸大に次ぐ有力な国公立大学として高評価される大阪府立大学ですが、関東での知名度はかなり低く、東京から進学する者はごくわずか。航空宇宙工学を学びたい東京の高校生が、進学先に選ぶことはまずありません」(大学事情に詳しい週刊誌記者)
実際、大阪府立大学や大阪公立大学への進学実績を見ても、関東以北の高校はランキング内には皆無だ。進学者数が1名などごく少ない場合はランキングに反映されないものの、実際のところ東京の高校生が関西の大学を受験すること自体、京大を別にすればかなりのレアケースだと言える。
学費の問題により国公立大学にしか進学できないという家庭は珍しくないが、関東では東大を筆頭に横浜国立大学や筑波大学、東京都立大学や東京農工大学で航空宇宙工学を学ぶことが可能だ。しかも学費の問題であれば、一人暮らしを余儀なくされる関西の大学を目指すこと自体が矛盾しているのは明らかだろう。
「一つ無理やり理由をひねり出すのであれば、東京で学校に馴染めなかった朝陽がせめて大学だけでも地元を離れたいと考え、浪花大学を選んだという筋書きでしょうか。しかし入学者のほとんどが関西人の浪花大学にて、東京出身で人付き合いに難のある朝陽が上手くやっていけるとは考えづらいところ。結局、舞との再会を演出するためのだけに、浪花大学の学生に仕立て上げたのではないでしょうか」(前出・週刊誌記者)
親元を離れて遠く離れた大学に通えるような若者なのであれば、周りに馴染めないことを理由に島留学した小学生だった過去はいささか不都合ではないか。しかも留学当時はスマホを持っていなかったのに、舞が朝陽の連絡先を知っているのも不自然な話。なんともご都合主義の筋書きでは、再登場の感動も薄れるというものだろう。