【罠の戦争】蛍原=小野花梨と熊谷記者=宮澤エマが見せた、繊細かつ説得力にあふれた表情!

 最後の最後にやってくれた! 3月27日に放送された「罠の戦争」(フジテレビ系)最終回では、鷲津議員(草彅剛)が自分の事務所から緊急会見をネット配信。政界の闇をぶちまけ、竜崎総理(高橋克典)を辞任に追い込んだのだった。

 配信後は自ら警察に足を運び、選挙期間中の買収事件を自白。不起訴処分にはなりそうなものの国会議員は辞職することとなった。総理と刺し違えた形となった鷲津だが、最終回はどんでん返しの連続となり、視聴者もハラハラドキドキを大いに味わったことだろう。

 その最終回は主役の草彅による鬼気迫る演技や竜崎総理(高橋)の存在感、普段は冷静ながら鷲津のネット配信に慌てふためく猫田秘書(飯田基祐)の無様な姿など、演者たちの見事な演技に支えられていた。

 それに加えて見逃せなかったのが、女性キャストが見せた繊細かつ説得力にあふれた演技だったという。

「本作における重要人物の一人が、鷲津の秘書である蛍原だったのは間違いありません。蛍原を演じた小野花梨はこの1月、第46回日本アカデミー賞にて新人俳優賞を受賞した実力者。その演技力にて鷲津を献身的に支えつつ、最後はいったん見放すものの再び鷲津を信頼するという、二転三転する役柄を分かりやすく提示してくれました。とくに最終回では蛍原が一瞬にして心変わりする場面の表情が最高だったのです」(テレビ誌ライター)

 蛍原は鷲津から、同僚議員の弱みを探るように指示され、それを断ったことでクビを宣告されていた。それまで鷲津に心酔していたことから彼女の落胆は大きかったのだが、鷲津が記者会見の途中で総理側から渡された原稿を破り捨てた姿にびっくり。慌てて後を追いかけると、鷲津は自分の事務所にて緊急ネット配信を始めようとしていた。

 鷲津は「できるだけ時間稼いでくれる? 頼むね、蛍原さん」と指示。その言葉ですべてを理解した蛍原は、戸惑いの表情から一瞬にして決意を込めた顔つきへと変わり、「はい!」と勢いよく返事したのであった。

「わずか数秒間の演技には、蛍原が見せた心の変化が存分に示されていました。これほどまで説得力のある数秒間には、演者としての小野の実力が垣間見られたのではないでしょうか。この場面には思わずグッときましたね」(前出・テレビ誌ライター)

 そんな小野に負けず劣らずの演技を見せてくれたのが、熊谷記者を演じた宮澤エマだ。前期のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で演じた実衣がわりとコミカルな役柄だったところから一転し、「罠の戦争」では政界の闇を暴くスクープを追い求める立場に。鷲津や鷹野議員(小澤征悦)に対して怖気づくことなく、堂々と渡り合う姿には凄みすら感じられた。

鷲津を軽蔑していた熊谷記者。ここからの変化が見ものだった。トップ画像ともに©カンテレ

 その熊谷記者は総理の犬と化した鷲津を軽蔑していたが、鷲津は総理から許可を得た生中継を利用して、総理の不正を告発しようと画策。鷹野と口喧嘩していたのも実は、総理側をだますための策略だったのである。

「鷹野の事務所で鷲津は、熊谷記者に『その続き、配信お願いできますか』と依頼。その言葉に熊谷記者は一瞬思案したのち、口角を少し上げてうなずいていました。記者を演じる宮澤はわずか数秒間の演技で、彼女が状況をすべて理解し決断を下した様子を存分に示してみせたのです」(前出・テレビ誌ライター)

 小野にしても宮澤にしても決して大きな演技ではなく、ほんの少しだけ表情を変化させていた。それでいて視聴者にはしっかりと、大きな心の変化が伝わっていたのである。こういった繊細な演技もまた「罠の戦争」の大きな魅力であったことは間違いないだろう。