この生配信を観ていた人たちは、未来の人気アイドルが誕生する瞬間を見届けた歴史の証人になったのかもしれない。
元アイドルで振付師の槙田紗子がプロデュースする新規アイドルグループのオーディション「SACO PROJECT!」の最終審査が5月30日に行われ、7名が合格を果たした。彼女たちは11月のデビューに向けて、約半年間の練習と準備期間へと入っていく。
この「SACO PROJECT!」では1月に募集を行い、2月には一次審査(配信審査)、3月には二次審査(実技審査)を実施。最終選考を経たうえで4月7日に全15名の最終候補者を発表していた。その候補者たちは一カ月超のレッスン期間を経て、課題曲をマスター。当初は5月9日に行われる予定だった最終審査がコロナ禍により延期となり、この日ついに、運命の最終審査が東京都内にて実施された。
今回の最終審査では15名の最終候補者たちが「チームS」と「チームP」に分かれ、それぞれパフォーマンスを披露。シンガーソングライターの山崎あおいが書き下ろしたオリジナル曲「SUMI-HAJI」を精いっぱいのダンスと歌で表現しきってみせた。
asageiMUSE では5月22日に行われたレッスンを取材・レポートしているが、その時に比べると彼女たちが披露したパフォーマンスは文字通り雲泥の差。この日は両チームとも、すでにデビューしているグループさながらの熱いステージを展開していた。
そして緊張の合格発表。今回の最終審査はミクチャで生配信されており、4カ月に及ぶ長期オーディションを追いかけてきたファンたちが固唾を飲みながらリアルタイムで発表の瞬間を待ち受けていた。
発表に先駆けて槙田は「オーディションなので私が責任をもって、すごくすごく考えたうえで結論を出しました。皆さんの意見も取り入れたうえで、出した結論です」と説明。その上で一人一人、合格に至った理由を説明し、その後に名前を呼ぶという方式で発表が行われた。以下、槙田の説明を全文で紹介する。
■あすか
この子は歌・ダンスのスキルでいったら私の中で評価1位ですね。この子がこのオーディションに来てくれて、私がパフォーマンスを重視したグループにしたいとずっと口うるさく皆さんにも言ってましたし、スタッフの皆さんにも伝えていたんですけど、そのグループを作っていく中でこの子がオーディションに来てくれたっていうこと。そしてそのオーディションの中ですごく成長してくれたことが本当にうれしく思います。
最初のレッスンから今日まで、楽しむということを一番意識できていたのかなっていうことに、芯の強さを感じます。これからグループを引っ張る存在になってください。
■秋元ゆうり
人間から出る魅力っていうのは、本当にどんなに物事を上手くやったりキレイにやったりすることよりも大事なんだなあって。言葉にできない、その人から出るパワーってものすごい力を持っているんだなって、この子を見て痛感しました。私もけっこうスキルだったり技術のことばかり気にしちゃうところがあったんですけど、私のその価値観を変えてくれた子かなって思います。
会うたびに第一印象が変わってきて、新しい顔が見えて、もっともっとこの子のことを知りたいなって思いました。デビューするにあたってはリズム感は死ぬほど鍛えようね!
■藍
オーディションを始めて、初めて会ってから、驚くほどキレイになったメンバーかなって思います。もうなんかタレントさんくらいかなってくらいのオーラを放っていて、独自の魅力に私はどんどんハマっていきました。
そして、個性的な雰囲気からは想像できないくらいピュアな心を持っていて、いつでもスポンジのように周りの言葉を吸収しようとしている姿勢がとっても印象的でした。そのギャップで世間を虜にして、どうかアイドルを楽しんでください。
■ひまわり
スタッフから好かれるっていうことが売れる近道だと、むかし私はすごく教えられました。現場にいる人が楽しい、あの子と一緒に仕事したい、あの子いい子だよねって言ってもらうことが、どれだけ大切なのかを私はすごく痛感しています。そういう子が絶対必要だなと思っていて、この子は周りから好かれる力っていうのがものすごくありました。
そして、いつでもまっすぐ、ちょっと突っ走り過ぎちゃうくらいまっすぐ心と目で向き合ってくれた子です。そのピュアなエネルギーをアイドル活動に存分にぶつけてほしいなって思ってます。
■はづき
長期でオーディションしていると、あ、この子変わったなっていうタイミングがあって、それって人それぞれ違うんですね。最初からすごく成長できている子もいれば、途中からすごい「なんかあった?」っていうくらい急に良くなる子もいて、その成長のスピードってバラバラなんですけど、いま完成しているものを見たいんじゃなくて、成長している過程だったりそういうものもしっかり見て判断したいと思って、長期オーディションにしました。それをやってすごく良かったと思う子です。
最終審査になってから、私もそうですし、先生たちからの評価がすごく高くなった子です。今日もステージを観てて、そんな目できるんだって感動した子です。すごくいい練習をできてたんだなって思うので、頭のいい子なんだなって思います。これからもその集中力と頭の良さでスキルをどんどん磨いて、引っ張っていけるくらいの存在になってほしいと思っています。
■かんな
私がライブで存在感が出せないって悩んでいた時期があって、その時にあるスタッフの方に「アイドルに一番大事なのは目力だ」って断言されたことがあって。目力のある人に目が行くから、目力がないんじゃないかとバッサリ斬られたことがあって。すごくそれがショックで覚えているんですけど、レッスンに来るたびに目力にとにかく驚いてました。この子の目はなんでこんなにキラキラしているんだろうって、毎回、見てて思ってました。
優れた感性、表現力がこれからどれだけ成長できるのか、すごく楽しみですし、まだまだ未熟なところはたくさんあると思うんですが、それも含めて私が責任をもって育ててあげたいなと思った子です。
■延松舞佳
この子のアイドル力には負けました! と言うしかないくらい、相当人を熱中させられる魅力があるんだろうなって思ってます。まだまだパフォーマンスを武器にするグループのメンバーとしてはスキル不足だし、まだまだ頑張らなきゃいけないことは多いんだけど、やっぱり頭がいいんだろうな。人が求めていることだったり、何をしてほしいのかすごく分かってる子なんだろうなっていうのが見えたので、その頭の良さだったり、洞察力だったり。
あとはすごく努力ができるところ。そこに惹かれて、この子と一緒にやろうと思いました。これからも負けん気の強さで、今以上に努力して輝いてください。
■私はこの15人のことが人として好きです
7名が合格となった今回の「SACO PROJECT!」。8名は残念ながら不合格となったが、プロデューサーの槙田は「私はこの15人のことが人として好きですし、魅力を感じてここに参加してもらいました」と語る。
候補者全員に対して何度も感謝の言葉を口にしたうえで、合格かどうかは「どうっていう話ではない」と説明。すべての出来事には意味があり、今回のオーディションを経験したことはこの先の人生に絶対に活きてくると強調したうえで、「それを活かすも殺すもみんな次第だと思います」との想いを告げていた。
続けて「何かを経験するっていうことが何よりも価値のあることだと思います」と指摘。彼女たちが今後、アイドルを目指すかどうかに関わらず「一人の人間として幸せになってほしいと心から思っています」との言葉をもって、今後の人生へのエールを贈った形だ。
そして合格した7名はいま、太宰治が愛した言葉として知られる「選ばれてあることの恍惚と不安と二つ我にあり」を実感しているに違いない。彼女たちが無事にデビューを果たす日に、ファンも大いに期待を高めていることだろう。