【ちむどんどん】暢子の涙は…愚かな兄を哀れに思ったのか、それとも?

 その涙には果たして、どんな意味が込められていたのだろうか。

 5月10日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第22回では、ヒロイン比嘉暢子(黒島結菜)の夢をつぶしてしまいかねない失態を犯した兄の賢秀(竜星涼)が、「ごめん」と謝る場面があった。

 為替詐欺に騙され、960ドルもの大金を持ち逃げされてしまった賢秀。暢子は高校を卒業して東京に行き、レストランで働くという目標を公言していたが、さらなる借金を背負い込んだ比嘉家の現状では、暢子の東京行きもご破算になりそうな雰囲気だ。

 しかし当の賢秀は「俺は悪くない」の一点張り。悔しさをこらえて夕食を作る暢子に「ごはんまだ?」とのんきに話しかけ、しまいには暢子が「ぽってかす!」(沖縄弁でバカ、間抜けの意)とキレてしまう有様だった。

 その夜、家族みんなが寝ているなかで「暢子、起きてるか?」と話しかけた賢秀は「ごめんな、本当にごめん」と謝罪。自分が詐欺に騙された一件について「俺はただうれしかったわけよ。生まれて初めて親以外の大人から褒められてうれしかったわけよ」との想いを明かしていた。

「子供のころからずっと、嘘つきとかろくでなしとか言われ続けてきた賢秀。高校はケンカで中退し、その後は那覇や名護に出稼ぎに出るも仕事が続かず、今でいうニートのような状態で実家でダラダラしている始末です。そんな賢秀は詐欺師から《いい面構えだ》《秘密を守れる》などとおだてられ、『初めて褒めてくれた人を信じたかった』と説明。『この人を信じて、俺をバカにした大人たちを見返してやりたかった』と思っていたことを暢子に明かしたのでした」(テレビ誌ライター)

暢子は「ヤング大会」で東京行きを宣言していた。トップ画像ともに©NHK

 そんな賢秀の言葉に「もう寝てるから」とだけ答え、布団にくるまっては涙を流していた暢子。彼女は賢秀の告白を受けて、兄のことを不憫に思っていたのだろうか?

 しかし身体を丸めて横たわる姿は、悔しさに打ちひしがれているようにも見えた。初めて褒めてくれた人を信じたいという賢秀の気持ちはまだ理解できるものの、詐欺師に騙されるのはまさにこういうタイプなのかと呆れるよりほかないところだろう。

「賢秀の告白からは暢子や家族のことを思いやる気持ちが感じられず、自分本位で行動していることが明かされたも同然でした。為替詐欺に遭ったのも、一発当てることで家族を楽にしてやりたいからではなく、《俺をバカにした大人たちを見返す》が動機だったのですから、暢子不在の発想であることは明らか。そんな自分本位の振る舞いで念願の東京行きがつぶされたいま、賢秀の言い訳を受け入れられなかったのも当然でしょう」(前出・テレビ誌ライター)

 果たして賢秀はどうやって、この非常事態を切り抜けるのか。「部にして返す!」(※部は倍の誤り)との書き置きを残してバスに乗った賢秀だが、さらなるトラブルだけは避けてほしいと、視聴者も念じてやまないことだろう。