多くの視聴者はもはや、賢吉おじさんの味方となっていたようだ。
5月18日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第28回で大きな展開だ。比嘉家の長女・良子(川口春奈)がついに、喜納金吾(渡辺大知)から正式なプロポーズを受ける場面が描かれたもの。そのシーンを巡り、叔父の賢吉(石丸謙二郎)に同情する声が数多くあがっているという。
比嘉家ではかねてから大きな借金を抱えていたものの、東京でプロボクサーになった長男の賢秀(竜星涼)から60万円もの送金があり、全額を返済できていた。ところがファイトマネーだと思っていたお金は、賢秀がボクシングジムの会長やジム仲間から借り逃げしたものだったことが判明。その60万円を返すためこの日、母親の優子(仲間由紀恵)は賢吉にあらためて、借金の保証人になるよう頼み込んだのだった。
すると賢吉は、良子に「見合いしれ。財産持ちの家との縁談を探してやる」と、鬼の形相で迫ることに。もっとも8年以上前から借金の保証人となってきた賢吉にしてみれば、当然の要求だと言えるだろう。
「その場に救世主のごとく現れたのが、以前から良子に求愛していた金吾。彼は地元の資産家である製糖工業の跡継ぎ息子で、この日はついに父親を伴ってのプロポーズという本気を見せてきたのです。降って湧いたかのような縁談を目の当たりにし、賢吉が狂喜乱舞したのも当然でしょう」(テレビ誌ライター)
賢吉は「渡りに船、棚から牡丹餅、こんないい話なかなかないよ。火の車から抜け出す最後のチャンス!」と叫びながら、テンション高めな不思議な踊りでその喜びを表現。良子に対して「すぐ決めれ。金吾…いや社長さんの気持ちが変わらんうちに結婚せぇ!」と、プロポーズを受けるように迫ったのも当然のことだろう。
朝ドラでは通常、視聴者はヒロインやその家族の想いに寄り添うもの。ところがこの場面では多くの人が賢吉の肩を持っていたのは確実だ。そのワケは、本作の制作陣に原因があるという。
「これまでにも借金の返済猶予を頼み込んだり、借金があるなかでヒロイン暢子(黒島結菜)の東京行きを懇願するなど、優子が賢吉に頭を下げる場面は何度となくありました。ところが不思議なことに、お願いする立場である優子のほうが毎回、賢吉を自宅に呼びつけていたのです。しかし優子がそうせざるを得ないのは、制作陣が『賢吉の家』のセットを作らなかったからではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)
しかも、金吾が良子にプロポーズする現場に賢吉が居合わせるためには、その場所が比嘉家である必要もあった。つまり賢吉は制作陣の都合により、比嘉家まで足を運ばせられていたと言えそうだ。
本作を巡っては優子に対して、借金に対する意識が低いとの批判があがっていたもの。その被害者と言える立場の賢吉だったが、それは結局、制作側が仕組んだ構図だったのではないだろうか。