【ちむどんどん】視聴率は上昇していた!決め手はドタバタ劇の楽しみ方が広まったから?

 いまや視聴者のほうも本作を「ファンタジー」として楽しむ術を身につけてきたのかもしれない。

 NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」が、SNS上で話題を呼び続けている。とはいっても内容を評価する声は少なめで、視聴者からは<ドタバタ劇><ご都合主義>といった声が続出。ツイッターでは「#ちむどんどん反省会」というハッシュタグを付けて、作品への批判を投稿するムーブメントが定着しているのである。

「時代考証が甘いとか、イタリア料理に関する描写がいい加減といった声も少なくありませんが、批判の中心は登場人物の言動に好感を持てないことにあります。ヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)は沖縄のやんばる地区出身で、コックを目指して上京。銀座のイタリア料理店『アッラ・フォンターナ』で働き始めますが、オーナーに堂々と文句をつけるなど身勝手な言動が目に余り、視聴者をイラつかせているのです。そのため『ヒロインの成長を応援しながら見守る』という朝ドラの本質が崩れているのが現状です」(テレビ誌ライター)

 ヒロイン暢子のほかにも、「俺はビッグになる!」が口癖の長男の賢秀(竜星涼)は、あまりにも身勝手な言動で周りに迷惑をかけまくり、比嘉家の借金を増やす始末。一方で母親の優子(仲間由紀恵)はなんでも自分で抱え込んでしまい、それでいて賢秀の言うことはなんでも受け入れてしまうことから、視聴者も<優子さん甘すぎるよ!>と呆れ顔だ。

 長女の良子(川口春奈)は決まりかけていた縁談を蹴って学校教員の石川博夫(山田裕貴)と結婚するも、石川家の「女は家を守るもの」という古い考え方に苦しむことに。しかし視聴者はそんな良子に同情するよりも、なぜ熱烈に求愛してきた製糖工場の御曹司を選ばなかったのかと、これまた批判の声があがる有様だ。

 そして三女の歌子(上白石萌歌)には批判こそ寄せられていないもの、子供のころから病弱で、仕事も恋も上手くいかない姿は見るも哀れ。自分勝手に生きる暢子や賢秀との対比があまりにも残酷で、制作陣に対する批判が高まる原因となっているのである。

視聴者に嫌われがちな賢秀と暢子が仲良しというところもまた「ちむどんどん」らしさなのかもしれない。©NHK

「しまいには視聴者だけではなく、イタリア料理研究家や大学教授からも『ちむどんどん』を批判する声があがることに。もはや本作は全方位から集中砲火を浴びている状況に見えます。SNSでは《我慢して観てきたけど離脱しました》《もう全然楽しめない》といった声も多く、視聴者離れは明らか。と言いたいところなんですが、実は本作の視聴率が徐々に上がっているという不思議な現象が起きていることをご存知でしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

 その現象は過去の朝ドラと比べることで浮き彫りになってくるという。前作の「カムカムエヴリバディ」は社会現象と言えるほどの話題を呼び、放送する季節も異なることから比較の対象とするのは不適切だろう。そこで昨年度上半期の「おかえりモネ」と比べてみると、なんとも興味深い現象が発見されるというのだ。

 両作品の週間平均視聴率を比較してみると、第1週でいきなり2.1%もの大差をつけて「おかえりモネ」が優勢に。第2週以降もその差は1.4%、1.4%、1.9%、2.0%、1.4%と、第6週までは常に1.0%以上の差をつけて「おかえりモネ」が上回っていた。

 ところが第7週では0.5%、第8週には0.9%というコンマ以下の僅差となり、第9週ではついに16.4%対16.2%と「ちむどんどん」が初勝利。第10週ではまたもや0.4%差で「おかえりモネ」が再逆転するも、両者の差は確実に詰まっているのである。

 しかも「ちむどんどん」への批判が激増したのは、ヒロインの暢子が上京した第5週(第21回~第25回)以降のこと。まさしくその第5週で「おかえりモネ」との差は最大の2.0%に達していたのだが、それ以降は差が縮まったばかりか、「ちむどんどん」自体の視聴率も上向きに。第7週の第35回ではシリーズ最高の17.2%を記録していたのである。

「その第35回は、暢子がオーナーの大城房子(原田美枝子)にペペロンチーノ対決を挑んだ回。SNS上では暢子の身の程知らずに大きな批判が寄せられたエピソードでした。そこで最高視聴率を取ったということは、視聴者が『ちむどんどん』の楽しみ方を変えてきたことを表しているのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

最高視聴率を記録した第35回はオーナーと暢子のペペロンチーノ対決が見どころだった。©NHK

 実際、第8週以降はコンスタントに16%台の視聴率が取れるようになっており、離脱どころか視聴者は増えているようだ。その一方では批判の声もどんどん激烈化しており、ツイッターでは「#ちむどんどん反省会」がトレンド入りすることもしばしば。つまり視聴者たちは、文句を付けながら本作を楽しんでいるのである。

 とは言え物語の内容が面白くなってきたという評価もとくに聞こえてはこない「ちむどんどん」。暢子の空回りぶりは相変わらずだし、詰めの甘さを指摘されがちな脚本では、フォンターナのシェフが海で転落して両足を骨折するという力技まで発揮だ。

「正直なところ、これほど展開の読めない朝ドラも珍しいのかもしれません。その《何が飛び出すか予想のつかない》ところが、回を重ねるごとにじわじわと視聴者の心をつかんだ可能性が高そうです。もっともそれは制作側の狙いというよりも、結果論と考えたほうがよさそう。ともあれ『ちむどんどん』にハマりつつある視聴者としては、暢子や賢秀が変に聞き分けのいい常識人になってほしくないと思っているのかもしれません」(前出・テレビ誌ライター)

 どこからどう見てもかなりの美人なのに、上京から6年目を迎えても暢子に色恋話がないところも謎の一つ。そんなファンタジー要素満載の「ちむどんどん」は、誰も真似できない稀代の怪作として記憶されることになるのかもしれない。