【ちむどんどん】最もヤバいのはやはり和彦?主体性のなさで暢子も不幸まっしぐらか

 この前と口にしていることが違うのは、どういうわけなのか。その陰には相当なヤバさが見え隠れしているようだ。

 8月8日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第86回では、ヒロイン比嘉暢子(黒島結菜)との結婚を母親の重子(鈴木保奈美)に反対されている青柳和彦(宮沢氷魚)が、重子に同居を提案する場面があった。

 大学教授の父親と、富裕な家庭出身の母親の間に生まれた和彦。物質面では不自由のない生活だったはずだが、「僕の両親のあいだには愛情や信頼関係はなかったのかも」と過去を振り返り、「だから家族団らんやいい思い出がないんだ」と明かしていた。

 家柄の違いを理由に暢子との結婚に反対する重子に対しては、「後悔してるよ、母さんの子供に生まれたことを」とまで言い放っていた和彦。それほど徹底的に重子を否定していた和彦が、今回はいともあっさりと母親への愛情を本人に直接伝えたのだから驚きだ。

「その理由は暢子から、母親との同居を提案されたから。子供のころから家族愛に恵まれてきた暢子は『一緒に暮らせば、もっとお互いのことを分かり合えると思う』との考えを持っており、なぜそこまでと問う和彦に対しては『大好きな人のお母さんだのに』と答えていました。あくまで自分基準の身勝手な提案ではありますが、暢子がそういった性格であることは視聴者のほうも織り込み済み。重子との同居を突破口に考えているあたり、いかにも暢子らしい発想だと納得できます」(テレビ誌ライター)

 そんな暢子に対し、どうにも風向きが一定しない和彦。同居の提案には驚いたものの「僕もまさかと思った。だけど暢子とならそれもいいかなって」と、あっさり受け入れていた。しかも暢子の提案をそのまま母親に伝え、ずいぶんと気軽に「どう?」と訊ねていたのである。

結婚には絶対反対の重子に対して、なぜかにこやかに話す和彦。トップ画像ともに©NHK

 重子から、家族生活で楽しい想い出などないと否定されると、和彦も「父さんが死んで、僕は逃げた。母さんと僕は価値観が違う、住む世界が違うって決めつけた」と、自らの行動を振り返ることに。母親の気持ちを知ろうともせず、ずいぶんと酷い言葉もぶつけたと語りながら、「母さんが僕をずっと愛してくれたから、僕は人を愛することができる」と告げたのであった。

「この変わり身の早さには驚くばかりです。しかも母親との同居はあくまで暢子のアイデアであり、もし暢子が同居を提案することがなかったら、和彦は今でも『母さんが僕をずっと愛してくれた』なとど言うこともなかったのでしょう。和彦は結局、家族への想いを巡っても“自分”というものがなく、暢子の考え方にいとも簡単に感化されたのではないでしょうか」(前出・テレビ誌ライター)

 そんな主体性のなさが、暢子と結婚を約束する理由にもなっていたとのかもしれない。

 和彦はもともと、同僚で恋人の大野愛(飯豊まりえ)と長年にわたって付き合っており、結婚式場まで予約していた。ところがいざ結婚を目の間にすると怖気づいてしまったのか、態度を明確にしないことに。しかも最終的には「全部なかったことにしてほしい」と婚約の解消を愛に申し入れていたのであった。

「愛との結婚話についても、結婚に前のめりな愛の両親が主導したようなもの。二人で住むマンションも用意してもらい、結婚式場も叔父のつてで高輪のホテルを手配することができました。しかし優柔不断な彼は途中で断ることもできず、最後の瀬戸際でようやく別れを切り出したものの、その言い方も『全部なかったことに』と責任を放りだす始末。せめて明確に愛を拒絶したり《暢子のほうがよかった》とでも告げればいいのに、この期に及んでも主体性のなさを発揮していたのです」(前出・テレビ誌ライター)

 暢子に言われた「母親との同居」にしても、青柳家はもともと自分が住んでいた家であり、和彦にしてみれば元の家に戻るだけ。自分にはさほどの精神的な負担はなく、暢子を毛嫌いしている重子と、その重子にどうしても認めてもらいたい暢子の二人だけが消耗する座組みになっているのである。

 自分は重子に対して「母さんへの感謝を、当たり前のことを、長い間忘れていた」と反省の弁を交えつつ、「母さんは僕を生んでくれた、この世でたった一人の大切な人」と歯の浮くようなセリフだけを言っていれば良いというお気楽な立場だ。そんな具合で暢子に振り回されているうちはともかく、この調子だといずれは暢子に対しても主体性のなさを発揮するのではないだろうか。

「そもそも和彦は、暢子と結婚したらどこに住もうと思っていたのか。現在は横浜・鶴見の沖縄料理店『あまゆ』の2階に二人とも下宿していますが、この調子だと結婚しても同じところに住み続けていたかもしれません。お互いに結婚を考えているのに、新居一つ考えられない和彦。正直なところ、暢子が和彦と一緒になることで幸せになれるかどうかは、なんとも微妙なところに思えます」(前出・テレビ誌ライター)

 考えてみれば先に「結婚してください」と言ったのは暢子だったし、フォンターナで式を挙げたいと提案したのも暢子だ。重子を式に呼びたいと主張しているのも、同居を提案したのもやはり暢子。そんな暢子に対して、和彦の主体性というのはいったいどこにあるのか。そもそも彼に主体性は存在するのか。

 正直なところ、暢子は本当に和彦が結婚相手でいいのか。いっぺん考えなおしてみたほうがいいのかもしれない。