【舞いあがれ!】新型コロナ禍で足止めの貴司、パリから帰国できても自宅には戻れない?

 新型コロナ禍という現実を描いたのであれば、ディテールまで描き切るのか、心配になるところだ。

 3月29日放送のNHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」第124回では、作中の時代設定が2020年4月となり、新型コロナ禍の真っ最中に。フランス・パリに滞在中の貴司(赤楚衛二)はロックダウンによる外出制限措置のなか、帰国もままならない状態となっていた。

 自分探しのため1月にパリへと旅立っていた貴司。ビザなし渡航では最大で90日間しかフランスに滞在できないが、この時期は特例として、滞在期間が無条件で180日にまで延長されていた。そのため貴司は7月まで合法的にパリ滞在を続けられるが、本人はいまや東大阪に戻る気で満々のようだ。

「電話で舞から『飛行機のチケット、取れそう?』と訊かれるも、『全然取られへん。ごめんな』と諦め顔の貴司。2020年4月は世界中で国際線のフライトが運休となり、帰国便を確保できない日本人が続出していました。ただ前週の3月24日に放送された次週予告では、貴司が舞や娘と一緒に長崎・五島を訪れているシーンがあり、無事に帰国できていたようです」(トラベルライター)

 果たして貴司は滞在期限の7月までに帰国できるのか。ただ帰国便のチケットが確保できたとしても、東大阪在住の貴司には帰国に際して大きな障害があるという。

 ここで気になるのは、その「障害」が作中でちゃんと描かれるかどうかだ。前出のトラベルライターはこう指摘する。

「2020年4月には日本とパリの直行便がANA・JALともに休止となり、エールフランスも羽田便と関空便を休止。週3便の成田便が残るだけでした。経由便を検討したくても、関西空港発着の国際線は全便が欠航となり、貴司が帰国する際には東京を経由する必要があったのです。それはすなわち貴司が帰国できた場合にも、しばらくは東大阪の自宅に帰れないことを意味します」

 この時期、海外からの帰国者は陽性か陰性かにかかわらず、14日間の待機を求められた。待機場所は自宅でもよかったが、空港から公共交通機関を利用することは禁じられ、家族がクルマで迎えにくるしかなかったのである。

コロナ禍のなか、東大阪でも全員がマスクを着用していた。トップ画像ともに©NHK

 せめて関空への帰国であれば、クルマを運転できる舞が迎えに行けたのだが、貴司は成田か羽田での帰国を余儀なくされることに。よもや舞が東京までクルマで迎えに行くとも思えず、貴司は隔離用に指定されたホテルに14日間滞在するほかなかったはずだ。

「この待機措置に強制力はなく、帰国後にそのまま鉄道や国内線で移動する人もいたようです。とはいえNHKのドラマにて、政府の要請を無視する行動を描くのも問題でしょう。そうなると新型コロナ禍は発生したけれど、帰国後の待機措置はなかったというファンタジーを描くほかないのかもしれません」(前出・トラベルライター)

 次回、貴司が自宅に歩いて戻ってくるようであれば、NHKはファンタジーを描くことに決めた、ということになるのだろう。