【ちむどんどん】賢秀からの60万円は「ファイトマネーの数十倍」という大金だった!

 その金額に、家族全員が目を丸くして驚いたのも当然だったことだろう。

 5月12日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第24回では、長男の賢秀(竜星涼)から送られてきた60万円もの仕送りに、比嘉家一同が驚く場面があった。

 多額の借金を抱えている比嘉家だが、ヒロインで次女の暢子(黒島結菜)は高校卒業を控え、東京のレストランで働きたいという夢を持っていた。その想いをかなえてあげたい母親の優子(仲間由紀恵)は勤務先の共同売店から300ドルの大金を前借り。姉の良子(川口春奈)も勤務先の小学校でやはり300ドルを借りていた。

 優子は借金相手で叔父の賢吉(石丸謙二郎)に300ドルを差し出し、借金の一部を返済するので暢子が東京に出るのを認めてほしいと懇願。しかしそれでは足りないようで、賢吉の妻が「せめてあと300ドルでもあったら違うんだけど…」とつぶやいたのも無理はなかったことだろう。

母親の優子は叔父の賢吉に300ドルを差し出して暢子の東京行きを懇願していた。トップ画像ともに©NHK

「その言葉に良子は『あと300ドルあったら暢子は東京に行っていいんですか!? 私も…』と言って立ち上がることに。ついに良子も虎の子の300ドルを差し出すのかと視聴者が思った瞬間、共同売店責任者の前田善一(山路和弘)が慌てた様子でやってきて、『これ開けてみて』と封筒を差し出しました。そこには1万円札の札束が入っていたのです」(テレビ誌ライター)

 その金額は実に60万円(約1666ドル)で、単純計算でも現在の300万円に相当。感覚的にはさらに大金だったはずで、比嘉家一同が目を丸くして驚いていたのも当然だ。

 善一によると、その大金はプロボクサーになった賢秀が送ってきたという。暢子が「真剣!?」、良子が「そんなわけないさあ」と驚くなか、善一が取り出した新聞には「沖縄から期待の新星 比嘉賢秀、衝撃のKOデビュー」との見出しが躍る記事が、賢秀の写真付きで掲載されていたのであった。

 記事によると賢秀は、アマチュアの大会でタイトルを軒並み手にしていた強豪を相手に番狂わせの勝利。「一夜にしてボクシングのシンデレラストーリーを歩むことになった」と激賞されていた。

 賢秀からの手紙には「母ちゃん しゃっ金を返してください」と書かれており、「暢子 東京に来い」とのメッセージも。これまで家族に迷惑をかけっぱなしだったダメ兄が、自らの拳で恩返しする形となったのだ。

 だがそんな感動の場面に、視聴者からは疑問の声が続出しているというのである。

「デビュー戦に勝ったばかりの新人ボクサーが、どうやって60万円もの大金を工面したのか疑問に思われるのも無理はありません。賢秀は安里ボクシングジムに所属しており、同ジムの安里会長を演じる具志堅用高が昭和49年(1974年)にプロデビューした際のファイトマネーは1万5000円だったそうです。作中の昭和47年初頭も同じくらいの金額だったとして、賢秀の仕送りはその40倍にも及んでいました」(スポーツライター)

安里会長を演じる具志堅用高は世界チャンピオン当時、ファイトマネーだけで年収1億円を超えていたという。©NHK

 この「ちむどんどん」では設定の甘さが指摘される場面も多く、今回の60万円についても視聴者が首をひねっているようだ。ただ当時のボクシング人気を考慮すると、あり得ない話ではないとの指摘もあるという。

「昭和30年代ほどではないにせよ、この時代にはまだボクシングの人気が相当高く、具志堅の世界戦は視聴率30%台が当たり前でした。世界チャンピオンになればプロ野球の最高年俸に匹敵する収入があり、ジムにはさらに多額の収益をもたらしていたのです。それゆえ有望選手の争奪戦も過熱しており、アマチュア界の大物を倒した賢秀に懸かる期待も相当大きかったはず。安里会長がポンと60万円を前渡しした可能性も十分に有り得たのではないでしょうか」(前出・スポーツライター)

 60万円のおかげで、それまで重くのしかかっていた借金問題が文字通り、一夜にして解決した比嘉家。あまりに出来すぎた話ではあるが、ここはそんな都合の良い展開を素直に楽しむのが吉なのかもしれない。