その言葉に「アキサミヨー!?」と驚いた沖縄県人もいたことだろう。
7月13日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第68回では、横浜・鶴見の沖縄県人会が毎年恒例の「沖縄角力大会」を開催した様子が描かれた。その際に、本来ならあり得ないはずの描写が見受けられたという。
全32人の参加者がトーナメント形式で優勝を争う角力大会で、優勝候補の筆頭はここまで二連覇中の砂川智(前田公輝)。その智は今回、優勝を達成したらヒロインの比嘉暢子(黒島結菜)にプロポーズする決心を固めていた。
智が一回戦で対戦するのは、新聞記者の青柳和彦(宮沢氷魚)。二人は中学生の時に何度も対戦したことがあり、当時は智の全勝だった。今回も一回戦で当たることを知った和彦は「お手柔らかに頼むぜ、僕の目的はあくまで取材」とあきらめモードだったが、途中から事情が変わってきたという。
「同僚で恋人の大野愛(飯豊まりえ)という存在がありながら、内心は暢子に心を惹かれている和彦。しかも智が優勝したらプロポーズするつもりだと人づてに知ってしまい、がぜん、勝負魂に火がついてしまったようです。終盤では実際に二人が対戦しますが、楽勝だと思われていた取組が大勝負となり、智は取組中にもかかわらず思わず『なんでそんな頑張るわけ!?』と口走っていたほどでした」(テレビ誌ライター)
観る側も手に汗を握る展開となった大一番。ラストシーンでは二人が同体で横倒しに倒れ込んでいたが、沖縄角力では相手の背中を土俵につけないと勝負が決しないため、どうやら次回もこのまま二人の取組が続いていく様子だ。
果たして智が勝ってプロポーズに近づくのか。それとも阻止した和彦が先にプロポーズするのか。二人の取組を暢子と愛の両方が見守り、次回はいよいよ修羅場になるのかと視聴者も盛り上がる場面だったが、ここで本来ならあり得ないはずの演出が露呈していたのである。
「行司を務めるのは『あまゆ』店主の金城順次(志ぃさー)。その順次は取組の際に『一本勝負、うい!』と声を掛けていましたが、これは明らかにおかしい発言でした。というのも沖縄角力は三本勝負の二本先取で勝負を決するのが古来からのしきたりで、一本勝負など有り得ないからです」(沖縄事情に詳しいトラベルライター)
沖縄角力が三本勝負というのは、沖縄角力を知る人にとっては常識中の常識。実際に鶴見で70年以上の歴史を持つ「おきつる角力大会」においても、すべての取組が三本勝負で行われているのである。仮に一本勝負が行われたとしたら、それはエキシビジョンマッチだと考えて間違いないだろう。
今回、作中で描かれている沖縄角力大会は、沖縄県人会にとって年に一度の恒例行事ということになっている。それならなおさら伝統に従って三本勝負でなければならないはずだ。
「それを一本勝負にしてしまったのは、例によって制作側の無理解によるものかもしれませんし、もしかしたら“テレビサイズ”に収めるため、時間のかかる三本勝負を避けたという放送上の都合という可能性もあります。とは言え実際の沖縄角力は通常、制限時間5分での三本勝負ですから、1回15分の放送に収めるのは決して難しくはないはず。むしろ智と和彦が一本ずつ取り合って、三本目で決着をつけるほうが盛り上がるはずです。それをなぜ一本勝負にしてしまったのか、残念でなりませんね」(前出・テレビ誌ライター)
果たして智と和彦のどちらが優勝するのか。ここはやはり、暢子の兄・賢秀(竜星涼)が優勝をかっさらって、青森出身の和歌子(駒井蓮)にプロポーズするというどんでん返しを期待したいところだろう。