そのセリフには視聴者も、サンドウィッチマン富澤たけしのように「ちょっと何言っているのか分かんない」とツッコみたくなったことだろう。
9月16日放送のNHK連続テレビ小説「ちむどんどん」第115回では、ヒロインの青柳暢子(黒島結菜)が営む沖縄料理店の「ちむどんどん」に、兄の比嘉賢秀(竜星涼)が訪れる姿が描かれた。
暢子の店では妹の比嘉歌子(上白石萌歌)がホール担当として働いているほか、臨月の暢子が出産を控えていることから、沖縄から母親の優子(仲間由紀恵)と姉の石川良子(川口春奈)も手伝いに来ていた。
そこに賢秀も来たことで比嘉家の全員が揃う形に。賢秀は母親が上京していることを歌子から聞き、飛んできたという。その目的は家族のみんなに猪野清恵(佐津川愛美)を紹介することだった。
「千葉の猪野養豚場に勤める賢秀は一人娘の清恵に惚れ、紆余曲折を経て二人は付き合うことに。そしてこの日、母親の優子に『この人と結婚したいと思って』と報告しました。その言葉に清恵は『ええっ!?』とびっくり。なんと賢秀は清恵本人の了解も取らないまま、自分の母親に紹介していたのです」(テレビ誌ライター)
向こう見ずな振る舞いではあるものの、賢秀の行動が出たとこ任せであることは視聴者もよく知るところ。この突飛な行動ももはや、通常運転として生温かく見守ることができただろう。
そして賢秀はやおらひざまずき、指輪の箱を差し出すことに。箱の中身は空っぽだったが、いつかダイヤモンドを買ってやると啖呵を切りながら、家族が見守るなか「俺の嫁さんになってくれ」と清恵にプロポーズしたのだった。
そんな求婚を受け入れた清恵だったが、意を決した顔つきで「言っておかないといけないことが」と切り出す。彼女には離婚歴があり、水商売で働いていた過去も恥じていた。だが優子は「清恵さんは強くて優しくて誠実で、賢秀にはもったいないくらいの人」と語り、清恵がどんな人物であろうと二人の結婚を受け入れる構えのようだ。
母親としての包容力を示してみせた優子。だがここから彼女が口にした言葉は、賢秀の突飛さをはるかに上回るレベルのトンデモ発言だったのである。それはある意味、比嘉家の行動原理を明確に表すものでもあったようだが…。
「優子は賢秀について、昔からわがままでケンカばかりで欲張りでダマされやすいと説明。誰も否定できないほど、賢秀はその通りの人物でしょう。ところが優子は続けて『だけど本当に心の綺麗なまっすぐな子なんです。なにより心が健やかなんです』との言葉を口にしたのでした。これには全視聴者が口あんぐり。もはや何を言っているのか理解できないとの声が続出したのも無理はありません」(前出・テレビ誌ライター)
賢秀は子供のころから自分本位のわがままな人間で、家族にすら平気でうそをつくタイプ。ダマされるばかりではなく、時には積極的に人をダマしてきたこともある。欲にかられて怪しげな投資話に手を出すこともしょっちゅうで、ボクサーを目指して上京した際にはジムの会長などから借金をしまくったまま借り逃げしていたり、妹・暢子の財布から現金をくすねたこともあった。
結婚相手の清恵を巡っても、自分は養豚場の仕事を勝手に辞めたり前借りを頼んだりと不真面目な勤務態度だったことは棚に上げ、清恵の離婚歴を責め立てる始末。自分には甘く、他人には厳しいタイプの典型例であり、誰がどう見ても「心が綺麗」とはほど遠いタイプだ。
「そんなバカ息子であっても優子の目にはなぜか、心が綺麗で健やかなタイプに見えるようです。優子はおそらく賢秀のみならず、良子・暢子・歌子の3姉妹に対しても同じような評価をしているはず。比嘉家の四兄妹はこれまでさんざん他人に迷惑をかけまくってきましたが、優子からきっちり叱られる場面はありませんでした。つまり比嘉家の行動原理では優子の価値観がその根底にあるものと考えられそうです」(前出・テレビ誌ライター)
優子は清恵に対して「これからいろんなことがあると思います」と前置きしつつ、「何があっても二人で力を合わせて生きていってください」との言葉をかけてきた。しかし二人の人生に何かがあるとしたら、その原因がほぼ賢秀にあることは疑いようもない。
それでも義母からは「二人で力を合わせる」ことを強要された清恵。正月休み明けにはさっそく、産休中の暢子に代わって「ちむどんどん」の仕事を手伝っていたが、どうやら新婚早々、他人はいくらでも利用するという比嘉家のペースにハマっていたようだ。